お茶会もよく行われる根津美術館。
再開後初めての展覧会は、
【モノクロームの冒険〜日本近世の水墨と白描】展
です。
早速、伺ってきましたが、
事前予約・事前決済の新しいシステムで、静かに快適に過ごすことができました。
こちらの記事では、
- 展覧会の感想
- 常設の茶の湯展示の魅力
- 根津美術館の新型コロナ感染症対策
などにつきましてお話させていただきます。
お役に立ちますことがあれば幸いです。
根津美術館 展覧会
『モノクロームの冒険 〜日本近世の水墨と白描』
会期 11月3日(火曜日)まで
この記事の目次
『モノクロームの冒険〜日本近世の水墨と白描』展の魅力
『モノクロームの冒険 〜日本近世の水墨と白描』展は、日本の近世の水墨画と白描画をメインテーマにした展覧会です。
水墨画というと地味に感じるかもしれませんが、実際に目の前にすると、水墨画であることを忘れてしまいそうになるくらい表現が豊かで迫力があります。
水墨画であることを忘れてしばらく見入った後で、はたと「あ、水墨画だった!」と気づく始末。
あらためてじっくりと鑑賞していきますと、
- 墨の濃淡だけでこんなにもダイナミックな表現ができるものなのか
- 筆のタッチで事物の柔らかさやかたさをこんなにも繊細に表現できるのか
と水墨画の奥深さに驚きます。
印象に残っているのは多くありますが、
緊張感をもって日常を過ごさなければならない現在、少しユーモラスのある画がふっと心を和ませてくれます。
例えば、たまたまどちらも鳥ですが、
「梟鶏図」(きゅうけいず) →ふくろう
江戸時代 狩野山雪 筆
「呂洞賓・鷺・鶴 図」 (りょどうひん・さぎ・つる ず)→鷺
桃山時代 海北友松筆(かいほくゆうしょう) 後陽成天皇・海山元珠賛
「呂洞賓・鷺・鶴 図」は、呂洞賓が剣(つるぎ)に乗って飛んでいる姿も楽しいです。
彩色がないのに、すごい迫力。臨場感。
外出自粛でワクワク・ドキドキという体験が少ないなか、本当にワクワクしながら鑑賞していることに気づきました。
まさに、「冒険 Adventure」 。
そんな体験を与えてくださり、感謝申し上げます。
常設展示室6 | 茶の湯展示の魅力
根津美術館に行くたびに、何度も足を運んでしまうのが、常設の「展示室6」です。
こちらの展示室には、季節の茶の湯の設えが展示されています。
ただ展示されているだけではなく、まるで自分が茶事に招かれた客人のような気分に浸れる。そんな場所です。
今回のテーマは
秋寂の茶
まずは、待合の汲出碗、そして床の設え。客人同士がお話しながら今日の茶事への期待が膨らんでいく様子が目に浮かぶようです。
続いて、本日の床と点前座が展開された茶室スペース。中置のやつれ風炉で濃茶の点前が展開されており、秋の深まりを感じさせます。
香合も展示されており、炭手前の風情を想像しながら、後座の設えの花入へ。
薄茶の水指、主茶碗、次茶碗も並んでいます。
和やかに薄茶をいただいた後、「素敵ねえ」とお茶碗を手にとり会話する様子も楽しい。
順番は前後しますが、懐石道具も展示されており、
懐石の折敷からは飯碗と汁椀の蓋をあける時のワクワクが感じられ、主菓子器からは本日のお菓子は何だろうと想像力がかきたてられます。酒盃からはもやはり楽しい会話が連想されます。
ご自分で茶事やお稽古をされる方には、大いに取り合わせのお勉強になるのではないでしょうか。
また、茶の湯をはじめて間もない方も、初釜や茶事へ1回行った後で、この展示室を訪れると、その時の感動がよみがえるかもしれません。
季節のお道具が他の展示と絶妙に絡めて展示してあることもポイントで、
茶の湯には縁がない、という方もメイン展示との関連を発見しにいくつもりで鑑賞すると楽しいかもしれません。
今回、個人的には蒲生氏郷(がもううじさと)作のダイナミックな竹花入、銘「唐よし」(からよし)が印象に残っています。
茶道に限らず、歴史上の人物について、知識としては頭に入っていても、腹に落ちてこない、というような事はありませんか?
目の前にその方が作られた花入がある。これほど力強い事実はありません。
茶の湯の世界では、そんな事実をいまだに目の当たりにできる。そこも魅力ですね。
展示室5 | 中国の陶片
展示室5では、中国の陶片が扱われています。
陶片資料室を常設している美術館としては、出光美術館がありますが、現在休館が続いています(2020年9月現在)。
茶の道を歩む者としては、何度でもお勉強したい陶磁器の世界。お勉強の機会を与えられ嬉しいです。
今回主に扱われているのは、越窯、定窯、龍泉窯の陶片。
青磁の陶片では鎌倉・材木座海岸で収集された陶片も展示されています。
次に鎌倉に訪れた際には陶片を探して歩いてしまいそうですね。
その他、根津美術館ならではの常設の展示
- 古代中国の青銅器(展示室4)
- 仏教美術(展示室3)
も静謐な空間となっています。
紀元前13〜11世紀の器が今もきれいな形で残っていて、私たちに不思議な時空の旅をさせてくれるなんて、有難いことですね。
展示室4には、根津美術館のマスコットとも言うべき双羊尊(重要文化財)も展示されています。(写真は根津美術館の入館チケット)
根津美術館の新型コロナ感染症防止対策
今月19日から再開した根津美術館ですが、新型コロナ感染症防止対策のため、マスクや検温、アルコール消毒などの基本的な防止対策のほか、以下のような施策がとられています(2020年9月現在)。
- 事前予約、時間指定、事前決済
- 館内のカフェのランチ提供はなし
- 庭園は散策できる
密を避けるため、前日までの事前予約、事前決済(クレジットカードのみ)が必要です。
事前予約では、入館時間が選べるようになっています。(例えば10:00~11:00など)
予約なしの当日入場や、指定した入館時間をすぎての入館はできませんので、注意いたしましょう。
ちなみに、この記事を書かせていただいた平日の午前最初の枠(10:00〜11:00入場)は人が数えるくらいしかいませんでした。
個々の退館時間は決められておらず、閉館までいても大丈夫との事でした(2020年9月現在)。
根津美術館内のカフェ→当面ランチ提供はなし
根津美術館内のカフェ「NEZU CAFE」は四季折々の庭園の美しい景色を眺めながら、寛げる場所です。
残念ながらランチ提供は当面の間中止という事ですが、ドリンクはいただくことができます。
*残念ながら、お抹茶と和菓子のセットも中止です。
*バームクーヘンとクッキーはありました。
時間帯にもよるのでしょうが、お食事の提供がない分、人も少なく快適に過ごせました。
根津美術館と言えば燕子花(カキツバタ)。
国宝の「燕子花図」(江戸時代/尾形光琳筆)はもちろん、ゴールデンウィーク頃に話題となる庭園のカキツバタも美しいですね。
そんなカキツバタをモチーフにしたコーヒーカップが素敵です。
庭園は散策できます
カフェでのランチはできませんが、庭園の散策ができるのが有難いですね。
伺った日は秋雨が降りしきる日で、あまり散策はしませんでしたが、秋の庭園も美しいです。
(2019年11月撮影)
↓次回の展覧会は紅葉の美しい季節。庭園の散策も楽しみですね。
再開までに様々なご苦労があったかと思いますが、
こうして来館者に安らぎの機会を与えて下さり本当に感謝申し上げます。
秋となり、例年ならばお茶会シーズンです。
早く状況が収束して再び美しい庭園でのお茶会がなされると良いですね。
どうぞ皆さまお健やかにお過ごし下さいますように。
根津美術館 の基本情報
住所 | 東京都港区南青山6-5-1 |
電話番号 | 03-3400-2536 |
開館時間 | 10:00-17:00 入館は16:30まで |
休館日 | ・毎週月曜日(月曜日は祝日の場合は翌火曜日) ・年末年始 ・展示入替期間 |
入館料 | 【特別展】 一般 1300円 (団体料金20名以上 1100円) 学生(高校生以上) 1000円(団体料金20名以上 800円) 【企画展・コレクション展】 一般 1100円(団体料金20名以上 900円) 学生(高校生以上) 800円(団体料金20名以上 600円)中学生以下は無料。 障害者手帳を呈示すると本人と同伴者1名まで団体料金適用。 |
カフェ | あり *現在ドリンク提供のみ(2020年9月現在) |
ミュージアムショップ | あり |
タバコ | 敷地内禁煙 |
最寄り駅 | 地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道駅」 「渋谷駅」から都バス「渋88」系統「新橋駅前」行 六本木ヒルズから「ちぃばす 青山ルート」(六本木ヒルズ〜赤坂見附駅) |
アクセス | ◆地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道駅」 ・A5出口(階段のみ)から徒歩約8分 ・B4出口(エスカレータあり)から徒歩約10分 ・B3出口(エレベータとエスカレーターあり)から徒歩約10分 ◆「渋谷駅」から都バス「渋88」系統「新橋駅前」行で約12分→バス停「南青山6丁目」にて下車徒歩5分 ◆六本木ヒルズから「ちぃばす 青山ルート」(六本木ヒルズ〜赤坂見附駅)約13分→バス停「青南小学校」にて下車徒歩1分 |
駐車場 | 9台(うち1台は身障者優先駐車場) |
公式HP | http://www.nezu-muse.or.jp/ 最新の情報は根津美術館の公式HPをご確認ください。 |
館内鑑賞時間:1時間〜2時間
庭園散策時間:30分
*あくまで目安です。
建物内の写真撮影が許されるのは1階ホールのみです。
来館者の皆さまが気持ちよく鑑賞できるように致しましょう。