だんだんと秋が深くなってまいりました。
お茶の方でも風炉を中置にすえて、釜の火をお客様に少し近づけて・・・とだんだんと暖をとる工夫のようなものをしています。
風炉の最後の月でもあり、半年間の季節に別れを告げる「名残りの月」でもあります。
何となく侘びた、そんな季節です。
それでも、例年ですと紅葉にお茶会にそして秋の美味しい食べ物と、心がワクワク、きらめくような心持ちになっていたような気が致します。
今年はちょっと様子が違います。何より1年があっという間に過ぎました。
お茶では9月から11月にかけてが、設えの上でも特に季節が分かりやすく感じられます。
「え?!もう10月??」
そのように感じられた方も多いのではないかと思います。
久しぶりに着物でお茶会
そんな中、旧暦9月1日に名残りのお茶会へ伺ってまいりました。
実に何ヶ月ぶりでしょう?久しぶりに着物でお茶会です。
ご亭主さまにおかれましては、この時期にお茶会をされるのは本当に気苦労の多いことだと思います。
それでも手洗い・アルコール消毒・換気はもちろん、密を避ける人数設定に、
点心をお弁当にして下さるなど、細心の注意・ご配慮をいただき、とにかく家族を守りたい身としては本当に有り難かったです。
(ちなみに私は移動も車です。)
*もちろん玄関前まで乗り付けるようなことは決して致しません。
吹き寄せのような美しい湘南・平塚の割烹「竹万」様のお弁当。
心和む「名残りのお茶会」で胸解き放たれる想い
おかげさまにて、プライベート感のあるゆったりとしたお茶会で、心和むひと時を過ごさせていただきました。
いろいろと窮屈に感じられるご時世だからこそ、茶席の中は時空を超える旅。ご亭主のお心尽くしの名残りの趣向に胸解き放たれる想いでした。
感動をほんの少しだけ…
寄付には利休さまが描かれた画賛と藁が。
古渓宗陳は利休さまのことを「菊のような人」と称されたとか。菊は他の花が枯れてもなお美しく残っていますね。
そして待合には菊の画賛。
期待に胸ふくらませ、濃茶席へ。
時代を証す鎹がほどこされた欠風炉に、ため息が出るような美しさの藁灰。どうしたらこんなにも寸分違わず並べられるのでしょうか。
床には七事式の偈頌を授けた無学宗衍和尚のお筆。
花入は片耳が欠けていたものを後から付けたという名残りらしい趣向。
古萩の主茶碗、次茶碗も美しく、見立ての建水も面白くて…
薄茶席のお軸も私の大好きな仙厓和尚のお筆。
そして何といっても中置には「わあ!すごい!初めて見た!」と私も含めて皆さま興奮しきりの物が。本当にお勉強になりました。
華奢な細棗が雅。薄茶席の建水もお見立てで唯一無二のもの。
濃茶席薄茶席と共通して大徳寺・金毛閣の松の古材が。
一貫してストーリーがある世界。
私のような小さな存在が、ご亭主のお人柄にふれて、お道具を通じて時空も超えることができました。
やはり茶席は楽しい旅。
Teatravel
だなと感じました。
こんな時だからこそ茶の湯を深く感じたい
今年の秋は、例年のような「どこかへ行こう、ワクワク」というときめきはあまりありませんが、その分、茶の湯を深く感じることができるような気も致します。
秋寂のお茶が静かに胸に響く。
そんな感じです。
この度の名残りのお茶会はずっと心に残るだろうと思います。
ありがとうございました。
古川宗洋拝