和菓子

お抹茶でどうぞ | 茶道を通じて楽しむ季節の和菓子【11月】晩秋から初冬へ

晩秋から初冬へ向かう11月。

山々の色とりどりの紅葉もきれいですが、街中の色づいた1枚の葉っぱからも季節の移り変わりが感じられます。

茶道では「炉開き」の時季。

茶人の正月」ともいうこの時季には道具の取り合わせも華やかに。

手作りの「粟ぜんざい」も社中でいただきます。

秋の実りをお祝いする意味もあるのか、穀類が混ぜ込まれた「亥の子餅」(いのこもち)をいただいて子孫繁栄や無病息災を願ったりも致します。

茶道を通じて楽しむ和菓子も11月は特に何かを願いながら、優しい気持ちでいただきたいものですね。

こちらの記事では、お抹茶と共にゆっくりと味わいたい11月の和菓子をご紹介致します。

「洛陽のみち」 とらや製

茶道 和菓子 11月(撮影2020年11月)

「洛陽」(らくよう)とは京都の町を言うのだそうです。

碁盤の目は京都を東西南北に貫く道を表現しているそうですが、露地の枝折戸のようにも見えます。

ピンクは桜、緑は新緑、黄色は紅葉でしょうか。

季節ごとに京都を訪れ、お茶を楽しみたくなりますね。

真っ白な薯蕷の生地は見た目にも豊か。

蒸すとほのかに優しい香りがします。

温めた器にそっと置いて、いただきました。
茶道 和菓子 器

(撮影2020年11月)

「遠紅葉」 とらや製

茶道 和菓子 11月(撮影2020年11月)

木枯らしの便りも届き、気温も段々と低くなって、どこかもの悲しい雰囲気さえ漂います。

そんな市中の秋の深まりにあって、山々の紅葉の美しさは心を明るくしてくれます。

「亥の子餅」 とらや製

茶道 和菓子 亥の子餅(撮影2020年11月 亥の日)

亥の日にいただく「亥の子餅」(いのこもち)

*2020年はじめの「亥の日」は11月4日でした。

一説によれば、「亥の子餅」は、旧暦10月の「亥の日」「亥の刻」に穀類を混ぜ込んだ餅を食べる中国の風習から来ているとか。

他方、アメリカには”Thanksgiving Day”という収穫を祝う行事があります。

秋の実りを祝う気持ちは世界共通かもしれませんね。

茶道 和菓子 亥の子餅(撮影2020年11月 亥の日)

毎年思うのですが、不思議な形のこのお餅も、「猪の子」つまり「ウリ坊」だと思うと、そう見えてくるから不思議です。

とらや製の「亥の子餅」には、小豆(あずき)や糖(砂糖)、米粉(新粉・糯粉)はもちろん、「胡麻」や「柿(干し柿)」も含まれており、大豆からできる「きな粉」も塗されています。

秋の収穫を思わせる豊かな味わいです。

古川宗洋
古川宗洋
亥の子餅を「亥の日」に食べ損なってしまったよ、という方は毎年おられるのではないかと思います。

亥の日はだいたい月に2回、月によって3回あります。

旧暦10月の2番目の亥の日。この日は一般にコタツなどを出すとされています。

実は私たちの生活に深く根付いている陰陽五行の考え方では、「亥」は「水」の気。

「火」の気を補うという意味でも、火災などを避けるという意味でも、亥の日の冬支度は都合が良いようです。

また、関東には旧暦10月10日に、「十日夜」(とおかんや)と呼ばれる稲の刈り上げを祝う行事が、またその日の晩には「稲の月見」と称して、お餅などを稲積みの上にお供えする風習もあるそうです。

お菓子屋さんでは、1番目の「亥の日」に合わせて限定販売をしているところもありますが、11月いっぱい「亥の子餅」をいただけるところもあります。

せっかくの「亥の子餅」。
無病息災、子孫繁栄。ご家族や大切な人と一緒に、または離れていても想いながらいただきたいですね。

亥の子餅 / いのこ もち / inoko mochi
Look like a baby boar, the protection of good health and fire.
A traditional Japanese mochi for Robiraki, opening sunken heath.

「山茶花」とらや製(赤坂店限定)

茶道 和菓子 11月(撮影2020年11月)

市中にあって冬の訪れを告げてくれる「山茶花」(さざんか)

主菓子器をどれにしようか散々迷って、結局縁高に。

11月のある日。

盆香合のお点前に貴人点薄茶のお正客。

濃茶付花月にも2回入らせていただき、1回目は花月の二服目で「花」。

2回目は「月」と「仕舞い花」と大当たりで有難く修行させていただいた日。

何だか気持ちも高揚していて、家に帰ってから夜に静かにお茶を点てたくなりました。

茶道 和菓子 11月

(撮影2020年11月)

茶碗は備前。力強いお茶碗も、今日久々に目覚めたかのよう。
ぬるま湯で息を吹き返し、お湯を注ぐとカッと燃え始めました。この冬、対話していく予感です。

こちらの「山茶花」は夜の大人の贅沢にもヘビーではなく、

黄餡は黄身餡という訳ではなく、思っていたよりもあっさり、さわやかなお味です。

「初時雨」とらや製

茶道 和菓子 11月(撮影2020年11月 立冬)

「立冬」を迎えました。

特に寒いという日ではないですが、お昼過ぎにパラパラと雨が降りました。

お稽古場に着くと、炉の火で温められた空間が優しく迎えてくれる。

そんな季節の到来です。

茶道 和菓子 11月(撮影2020年11月 立冬)

冷えた身体がお茶で温まり、忙しない心がほぐれていく。

そんな願いを込めて、萩焼の菓子器を選んでみました。

「小佐女菊」とらや製

茶道 和菓子 11月(撮影2020年11月)

菊の異名としてある「隠逸花」(いんいつのはな)

利休居士が居士号を勅賜された際、宗易時代からの参禅の師である古渓宗陳(こけいそうちん)和尚は、喜びの偈頌(げじゅ)を贈っています。その結語に

「風露新香隠逸花」(ふうろ あらたにかおる いんいつのはな)

とあります。

他の花が散っても最後まで美しい菊の花は、孤高で気高い雰囲気をもっていますが、

その清々しさと凛とした香りを、利休居士の深い茶の心の象徴とされています。

こちらの「小佐女菊」(こさめぎく)は見た目の気高さだけでなく、お味も濃厚。どっしりとした重みがあります。

ただ「きれい」と言っていただくだけではなく、気持ちを落ち着けて、今日お茶ができる幸せを噛み締めながらいただきたいお菓子です。

「蜜柑餅」とらや製

茶道 和菓子 11月(撮影2020年11月)

温暖な気候で育って寒い冬に届くミカンは、家族団欒を思い起こさせる果物です。

柑橘を思わせる爽やかな味で心がさっぱりとしたあとは、美味しいお抹茶をいただいて。

優しい気持ちにさせてくれます。