*写真は昨年10月末に東京中野千秋庵で行われました「夕去りの茶事」からです。
この記事の目次
11月のお茶会に向けて
11月のお茶会に向けて活気があるのは亭主側だけではなく、お客様もお勉強熱心です。
先日は茶道経験はないのですが「お茶人ばかりのお茶会にぜひ参加してみたいのです!」というとても熱意のある起業家の方が大阪から飛行機に乗ってお越しになられ、お客のお稽古をされていきました。
もともと事業の分野で目覚ましい活躍をなされている方ですので、物事の本質のつかみ方、ポイントを押さえる能力が非常に高く、驚くくらいスムーズにお稽古が進んでいきました。
↓その方に事前に読んでおいて下さいとお勧めしたのがこちらの本です。
『「はじめて茶会に招かれました。」客の作法がわかるイラストガイド』(田淵正敏イラスト・淡交社編集局編)
A6サイズ、144ページ
「取引先のお客様からお茶会に誘われてしまった!」という田中くんの視点で、初めての大寄せのお茶会の流れ、持ち物や、最低限の作法などが、分かりやすいイラストで丁寧に書いてあります。
大寄せのお茶会のだいたいの流れが分かるので、田中くんのように「全くの初心者だけどお茶会に行くことになった!」という方はもちろん、お稽古を始められた方、亭主側・お水屋で初めてのお茶会という方にも参考になる本です。
ほとんどのページはイラストで1時間もしない内に読めてしまいます。お茶会に招かれてしまったものの忙しくて準備の時間がないという方にもオススメです(でもなるべく早目に読んで準備して下さいね)。
▼こんな方におすすめ▼
・初めてお茶会に行くことになった!方
・自分の先生がお茶会をする事になりお運びやお水屋をお手伝いする事になった方
・お茶会ってどんなことするの?と疑問をもっておられる方
初めてのお濃茶もまろやかで美味しく感じられたとのこと。
さらにお稽古が必要ではと心配もされておりましたが、まずはお茶会で楽しんでいただくことが1番。あまりご心配なさらずに当日を楽しみにしていて下さいとお伝えしました。
茶道はお客が「お金を払えばサービスを受けることができる」という一方向のものではなく、一座建立の精神で亭主側も客側も共に一つの場を作り上げていくものです。
この方はその精神を理解し尊重し、全くの初めてだけれども少しでも学びたいという思いで大阪から飛行機に乗ってお稽古に来られたのです。
私たち東京中野千秋庵の社中もこの方の想いから学ぶものが多くあると感じ入りました。
お客様と良き時を迎えられるよう心して準備してまいりたいと思っております。
「白珪尚可磨(はっけいなおみがくべし)」
既に輝いている宝石のような石もなお磨くべし。
大阪から来られた若き実業家の方が今後もなお励まれるようにと東京中野千秋庵の庵主・降幡宗恵が掛けました。
根来塗の棗
主菓子は「まさり草」(菊の古名)
干菓子は「初雁」に「しめじ茸」
干菓子器は村瀬治兵衛 造。
お菓子は「茶道用和菓子専門 和菓子司 太市」(目黒区洗足)さまよりお届け頂きました。有難うございます。
結果来自然
学生の時はこの軸が嫌いでした。
試験勉強を控えた週末、お稽古にいらっしゃるお弟子さん達が帰った後でお稽古場の前を通ると、母が「おいでおいで」をします。お菓子があるよ、と。
私も勉強に疲れたから何か口でも入れよう飲もうと思っていたので、お抹茶は何よりとお稽古場に入ります。
すると床には
結果来自然(結果自然と来たる)
コツコツ勉強をしてきた人には落ち着いて見ることのできる軸も、
焦って試験直前に集中して詰め込んでいる人間には何とも落ち着かない軸なのです。
母は何も言わないのですが、
この軸を前にすると胸に手を当てて反省するのです。
毎回反省しては毎回忘れ、毎回「おいでおいで」に誘われてお軸を見てはまた反省。
今思えば何とのどかな学生時代でしょうか(笑。
年を重ねて試験にも追われなくなると、だんだんとこの軸が好きになっていきました。
今は
「おさまるべきところに物事がおさまる」
というようにも読めて、お茶をさせて頂いていることの幸せをしみじみ感じます。
さて、あまり宜しくない私の学生時代とは異なり、東京中野千秋庵には現在ドイツ語で卒業論文を鋭意執筆中の大学生がおります。
お父様がアメリカ人でお母様が日本人の彼は、もともと横浜のお稽古場(2013年スタート当時は宗洋自宅)に高校生の頃から通っていてくれました。
高校生でドイツ語を学び始め、あれよあれよという間にドイツ語検定なども通り、大学もドイツ語学科へ進学。ドイツへ留学していた半年と就職活動中はお稽古をお休みしていましたが、無事内定も頂きました。
内定もいただいて後は卒業するだけ。時間あるでしょう?と聞いてみると、とんでもない。
本当は卒業論文を書かなくても卒業できるけれども、あえてドイツ語の卒論執筆に挑戦中とのこと。
すごい。
彼には「結果来自然」がどんな風に読めているのかしら。
軸の面白さは解釈が良く分からないところ。
人によっても異なるし、同じ人でも、季節やその人のその時の状況によってもまた異なります。
こうして毎年同じ季節に同じお軸を拝見させていただき、自分の中の変化に気づいていくことも、茶道においては大切な時間です。
そういえば東京中野千秋庵はドイツにご縁があるような・・・
行楽日和が続いていますね。
どうぞお健やかに秋をお楽しみ下さい。
古川宗洋拝
10月下旬横浜・三渓園にて撮影