この度の台風15号は全国に大きな爪痕をもたらしました。被害にあわれた皆さまに、心からお見舞い申し上げると共に、1日でも早くいつもの日常が戻られるようお祈り申し上げます。
夏休み明けのお稽古が始まりました。
残暑や台風、それぞれに大変だった事も
嬉しい事もあった後での再会。
秋の季節も皆さまとお茶を共にできますことを感謝申し上げます。
この記事の目次
中秋の名月にちなんだお菓子
今年の中秋の名月(十五夜)は13日、満月は14日でした。
お菓子も月の美しい季節にふさわしいお菓子でした。
*今週も茶道用和菓子専門の太市さまより朝早くお届けいただきました。有難うございます。
主菓子 月かん
雲間から顔を出した瞬間でしょうか。
干菓子は 「玉兎」と「花すすき」。
干菓子器にどう盛るかは毎回皆さん悩まれるようです。
最低限押さえておかなければいけないルールはあります。
それと季節と暮らしに関する知識でしょうか。
知識と書きましたが、最初から知っていなければならないものではなく、茶道のお稽古を通じて「気付いて」いけば良いのかなと思います。それがきっとまた楽しい道かと。
玉兎(たまうさぎ)は月をあらわします。
ウサギさんだから芒に隠れているのかな?と思いきや、お月様なのですね。
*ちなみ禅語で「玉兎」(ぎょくと)は月のこと。「金龍」(きんりゅう)と出てきたら太陽のことです。掛軸を見る時の参考にセットで押さえておくと良いかもしれません。
秋に寄せて月のお点前 | 茶箱
茶箱はもともと茶弁当と言われていたもので、旅先や屋外(野点)で楽しむために使われていたものです。
祖母の愛用品だった茶箱
個人の携帯道具であったからか、美術館や博物館で目にするものも、愛用していた方の好みや美意識が反映されたものが多いように思います。
裏千家では
- 卯の花点前
- 雪点前
- 月点前
- 花点前
- 和敬点前
- 色紙点前
と6種類のお点前がありますが、
茶箱の中で最も美しいお点前との声も高いのが月点前です。
夏休み明け、皆さん遠慮して「まずは基本の卯の花から・・・」となりがちですが、
どなたかがお点前を始めれば、一同、秋の風情、月を愛でる幸福感に満たされます。
掛軸を見て想うこと
「吾が心秋月に似たり」
月を見て想う事は人それぞれであるように、掛軸を見て想うことも人それぞれです。
少しでも月のように澄んだ心で、曇りなき眼でのぞんでいきたいと願いつつ・・・
毎回のお稽古はそんな自分の心や姿勢を確認する場。
お稽古場に入って最初に目にする掛軸も、自分の今の様子を表すもののように感じるから不思議です。
今宵、月を見て何を想うのでしょうか。
ひょっとすると月を見ながらお稽古場で見た軸のことを思い出し、そらんじる方もいるかもしれません。
お茶が日常に溶け込む瞬間です。
茶道のお稽古は本来口伝なので悪しからず
さて来月からいよいよ中級以上、四カ伝(しかでん)のお稽古に進まれる方もおられます。
- 口頭のみらしい
- 本当に教本もないらしい
- なのにメモも取ってはいけないらしい
こんな不安は、全部本当です(笑。
本来お茶のお稽古は口伝のものなので、悪しからず。
ただ修得していくうちに、どんどんお茶の楽しさが深まっていくことは間違いなしです。
そしてお道具についてもより理解が深まり、今まで茶道関連の美術館に行っても「???」だったものや点にしか過ぎなかったものが線になっていくと思います。
そんな楽しみが増えそうな書籍をご紹介させていただきます。
ご一緒にお勉強してまいりましょう!
『奥秘にも使える名物茶入の伝来と逸話(茶の湯便利帳5)』(青木準子 編著/世界文化社) A6サイズ 304ページ
「ご伝来は?」と聞かれて困ってしまうという方も多いのではないでしょうか。本書は珍しい相伝物に関する書籍となります。名物茶入を分かりやすく分類。逸話と共に丁寧に紹介してあります。
・お道具の寸法、所蔵美術館などの基本情報はもとより、
・仕覆
・伝来
・逸話
・銘の由来
・使用の茶会
もコンパクトにまとまっています。
巻頭には大名物を中心にカラー写真も掲載されており形を覚えるのにも役立ちます(巻末にも茶入の形がイラストで掲載されています)。
茶入だけではなく天目茶碗もコンパクトに掲載。
巻末には伝来に関連する人物が五十音順で紹介、年号早見表や江戸幕府将軍在職表などもあり時代の整理にも役立ちます。
お稽古に行くときに携帯できる嬉しいハンディサイズ。
編著者の青木先生に心より感謝を申し上げたい一冊です。
▼こんな方におすすめの本です▼
・お稽古が四カ伝以上となった時にいつも困っている。
・美術館・博物館でお道具はよく見るがイマイチ整理ができない。
・伝来をいつも忘れてしまう(本書は逸話と共に掲載されているので頭に入りやすいです)。
高原のお花が今月も | 茶花
小淵沢在住の社中の方が初夏から初秋にかけて、毎月高原の清々しい花々を持ってきて下さいます。
風情ある芒に、土壌の豊かさを感じる力強い水引、ほととぎす、桔梗。東京や横浜にもあるけれど、こんなに力強くはなく・・・
ホトトギス
ホトトギス
桔梗
生き生きと楽しく。
爽やかな高原の風が吹き抜ける瞬間。
いつも有難うございます。
こちらは千秋庵の芒。秋の七草でもある「すすき」は「すくすく育つ木」という意味もあるのだとか。
茶箱の書籍いろいろ
ここで茶箱に関する書籍をご紹介させていただきます。
本来個人の携帯道具であった茶箱はプライベート感あふれていてよいもの。
現代のトキメキに心通じるものだと思います。
現代の暮らしで楽しむ茶箱の本
『はじめての茶箱あそび 「自分だけのひと箱」の組みかた』(ふくいひろこ著 世界文化社)
B5版 オールカラー96ページ
著書のふくいひろこ さんは
「お茶が好きで茶箱が好きで」
独立しましたというフリーの編集者さんです。
芯があるのに柔和でたおやか。優しい雰囲気のある素敵な女性です。
女子がキュンとするお道具たちはどれも大切に選ばれた逸品。こちらの心まで楽しくさせてくれます。
「おわりに」で語られるように
「茶箱があればどこもが『わたしの茶室』になる」!
茶室がなくてもお稽古場にあるようなお道具が全て揃っていなくても、茶箱は自分のお茶を表現できる世界。
春はお花見に、5月の新緑の中で、秋は紅葉、冬はお家でぬくぬくと。
いつでも心地よく美味しくお抹茶を頂きたい方の背中を押してくれる一冊です。
▼こんな方にオススメ▼
- 自分らしくお茶を楽しむヒントがほしい!
- 家庭で気軽にお茶を楽しむヒントがほしい!
- 可愛い小物が大好き!
点前やお道具の拝見についてチェックしたい方
茶道は基本的に口伝によって継承されていくものです。分からないことやお聞きになりたいことは必ずまずご自分の師匠にお聞きください。また「見て学ぶ・真似る」がとても大事です。「後で見返せばいいや」ではお稽古の醍醐味も楽しさも半減してしまうことを申し添えさせていただきます。
『裏千家茶道点前教則20 茶箱一』(千宗室(16代)著 淡交社)
B5版 オールカラー144ページ
写真が大きくて見やすいオールカラー。メモを取る余白スペースが大きいのも嬉しいポイントです。
『茶箱一』には「卯の花点前」「和敬点前」「色紙点前」が掲載されています。
▼こんな方におすすめの本です▼
- 茶箱のお点前を見やすい本でチェックしておきたい
- 茶箱を横断的に整理したい
- 自分で茶箱を練習するときに広げておきやすい本がいい
『裏千家茶道点前教則21 茶箱二』(千宗室(16代)著 淡交社)
B5版 オールカラー136ページ
写真が大きくて見やすいオールカラー。メモを取る余白スペースが大きいのも嬉しいポイントです。
『茶箱二』には「雪点前」「月点前」「花点前」が掲載されています。
▼こんな方におすすめの本です▼
- 茶箱のお点前を見やすい本でチェックしておきたい
- 茶箱を横断的に整理したい
- 自分で茶箱を練習するときに広げておきやすい本がいい
『裏千家茶道 茶箱の鑑賞と点前』(千宗室15代監修/今日庵業躰部指導 淡交社)
B5版オールカラー160ページ
「卯の花点前」「雪点前」「月点前」「花点前」「和敬点前」「色紙点前」の6種類の点前が分かりやすい写真で1冊にまとまっています。
「茶箱の鑑賞」とあるように、利休居士から裏千家代々のお家元が好まれた代表的な茶箱が掲載されており、それらのお道具を見ることも楽しい一冊です。
また、冒頭に鵬雲斎大宗匠(裏千家第15代お家元)の茶箱のお話があります。父である第14代お家元淡々斎より頂いた茶箱で特攻の戦友たちに点てたお茶、昭和26年から始まった海外への茶道行脚に携帯した茶箱について大切な思い出を語っておられます。
本来は移動と共にある茶箱だからこそ、人生の旅路の友となる存在とも言えるかもしれません。茶箱点というものを深めたくなる気持ちになるかもしれません。
振出しのお菓子の頂き方や客の茶箱の拝見の仕方などは、平成24年発行の『裏千家茶道点前教則』20(茶箱一)・21(茶箱二)よりも詳しく掲載されています。
▼こんな方にオススメ▼
・「卯の花」から「色紙」まで茶箱点全部を1冊でチェックしたい。
・裏千家歴代のお家元の好みの茶箱を見てみたい。
・お客としての茶箱の拝見の仕方をチェックしておきたい。